「フィリピン不動産を法人名義で買えば節税になる」——この話を聞いて興味を持った方は多いはずです。しかし、法人スキームには確かな節税効果がある一方で、税務署に否認されるリスクも存在します。本記事では、AFP・宅地建物取引士の資格を持ち、実際にマニラとセブに物件を保有する私Christopherが、法人スキームの節税メリットと否認リスクの両面を実体験ベースで解説します。
フィリピン不動産×法人スキームの結論:節税は可能だがリスクも大きい
一言で言うと「正しく設計すれば有効、雑にやれば否認される」
フィリピン不動産を法人名義で取得する節税スキームは、結論から言えば「有効だが万能ではない」です。法人の経費計上や減価償却の仕組みを正しく活用すれば、個人で保有するよりも手元に残るキャッシュを増やせます。
ただし「節税」を目的の前面に出しすぎると、税務調査で否認される可能性が高まります。法人としての事業実態が問われるためです。私自身、法人を設立して海外不動産を保有する立場ですが、顧問税理士と何度も協議を重ねたうえでスキームを組んでいます。
なぜその結論になるのか——3つの根拠
- 根拠①:法人税率と個人所得税率の差 個人の最高税率は所得税+住民税で約55%。一方、法人実効税率は約23〜34%。この税率差が法人化の最大のメリットです。フィリピン不動産の賃料収入や売却益を法人に帰属させることで、手取り額に大きな差が出ます。
- 根拠②:法人なら経費の幅が広い 渡航費、現地視察費、管理委託費、借入金利息など、法人であれば事業経費として認められる範囲が個人より広くなります。フィリピンへの視察旅費も、事業関連性を示せれば損金算入が可能です。
- 根拠③:否認事例が実際に存在する 国税庁は近年、海外不動産を利用した過度な節税スキームへの監視を強化しています。2020年度税制改正では海外中古不動産の減価償却を利用した損益通算が制限されました。法人スキームでも実態が伴わなければ同様に否認される可能性があります。
私がフィリピン不動産を法人で保有して経験したリアルな話
私が実際にマニラのコンドミニアムを法人名義で取得した時の話
私は2018年、マニラのマカティエリアにあるプレビルド物件(約800万ペソ=当時のレートで約1,700万円)を自社法人名義で購入しました。当時、株式会社を設立して間もない頃で、「法人で海外不動産を持てば経費が使える」という情報だけで動いた部分が正直ありました。
しかし、いざ購入手続きを進めると想定外の壁にぶつかりました。フィリピンでは外国人が土地を所有できないため、コンドミニアムの区分所有権に限定されます。さらに、法人名義での購入にはフィリピン側でSEC(証券取引委員会)への届出が必要なケースがあり、現地弁護士への依頼費用だけで約15万ペソ(約30万円)かかりました。
加えて、日本側の税務処理でも苦労しました。初年度の確定申告時、顧問税理士から「この法人の事業目的と不動産取得の関連性を明確にしないと、税務調査で突っ込まれます」と指摘されたのです。当時の私は「法人で買えばOK」と安易に考えていたため、冷や汗をかきました。
そこから学んだこと——数字で語る現実
結果的に、法人化による節税効果は年間ベースで約40〜60万円ほどでした。内訳は、法人税率と個人所得税率の差による節税が約25万円、経費計上(渡航費・管理費・通信費など)による課税所得圧縮が約15〜35万円です。
一方で、法人維持コストとして年間で法人住民税の均等割7万円、税理士顧問料36万円(月3万円)、決算申告費用15万円、合計約58万円が発生しています。つまり、フィリピン不動産1件だけでは法人スキームの節税効果はほぼトントンか、場合によってはマイナスです。
私の場合はセブにも物件を持ち、東京・浅草での民泊運営も同じ法人で行っていたため、トータルでは法人化のメリットが上回りました。AFP(日本FP協会認定)の知識を活かしてキャッシュフロー計算を繰り返した結果、法人で複数事業を束ねるスキームが最も合理的だと確信しています。
法人スキームでフィリピン不動産を購入する具体的手順と比較
個人保有 vs 法人保有——比較表で見る違い
| 比較項目 | 個人保有 | 法人保有 |
|---|---|---|
| 所得税率(日本) | 最大約55%(所得税+住民税) | 実効税率約23〜34% |
| 経費計上の幅 | 限定的(修繕費・管理費等) | 広い(渡航費・人件費・借入利息等) |
| 減価償却 | 2020年改正で損益通算制限あり | 法人内で損益通算可能 |
| 売却益の課税 | 短期39%/長期20% | 法人税率で課税(他の損失と通算可) |
| 設立・維持コスト | なし | 年間50〜80万円程度 |
| 税務否認リスク | 低い | 事業実態がないと高い |
| フィリピン側の手続き | 比較的シンプル | SEC届出等が必要な場合あり |
この表から分かる通り、法人保有は節税メリットが大きい反面、コストとリスクも増えます。年間の賃料収入が300万円を超えるあたりから法人化のメリットが明確になるというのが、私の実感値です。
初心者が最初にやるべきこと
いきなり法人を設立してフィリピン不動産を買うのは危険です。まず以下の3ステップを踏んでください。
ステップ1:海外不動産に強い税理士に相談する
国内不動産しか扱ったことのない税理士では、海外不動産の税務処理に対応できません。「国際税務」や「海外不動産」を専門分野に掲げている税理士を探してください。私は3人の税理士と面談して、ようやく海外案件に慣れた税理士に巡り会えました。
ステップ2:法人の事業目的を明確にする
「節税のためだけの法人」は税務否認の対象になります。不動産賃貸業、コンサルティング業など、事業としての実態を持たせることが必須です。定款の目的欄には「海外不動産の取得・賃貸・管理」を明記しましょう。
ステップ3:フィリピン現地の法律・規制を確認する
フィリピンのCondominium Act(共和国法第4726号)では、外国人のコンドミニアム所有は全体の40%までという制限があります。法人名義であっても日本法人は「外国法人」扱いになるため、この制限の対象です。現地の法律事務所への確認を怠らないでください。[INTERNAL_LINK_1]
法人スキームの注意点・よくある失敗例
よくある失敗3つ
- 事業実態のないペーパーカンパニーで購入してしまう
法人に実態がないと判断されれば、経費計上がすべて否認されます。従業員がゼロ、オフィスもなし、売上は海外不動産の賃料だけ——このパターンは税務署から「個人の所得を法人に付け替えているだけ」とみなされる可能性が高いです。宅建士として不動産取引の実務を知る立場から言えば、法人の活動記録(議事録・契約書・送金記録)を残すことが最低限の防御策です。 - フィリピン側の税務を無視する
フィリピンにも所得税(賃料収入に対して最大25%の法人税、または総収入の3%のMCIT)があります。日本とフィリピンの租税条約(日比租税条約)を活用しないと二重課税になります。外国税額控除の申請を忘れるケースが驚くほど多いです。 - 為替リスクを甘く見る
フィリピンペソは対円で大きく変動します。2019年に1ペソ=約2.1円だったものが、2024年には約2.7円前後まで動きました。法人の帳簿上、為替差損益が発生するため、期末の換算レートによっては想定外の課税が生じます。
私や周囲で実際に起きた失敗実例
私の知人の投資家は、2019年にセブのマクタン島にリゾートコンドミニアムを法人名義で購入しました。目的は「社員の研修保養施設」としての経費計上でした。しかし、実際には社員数が1名(本人のみ)の会社であり、「保養施設」としての使用実績もほぼゼロ。税務調査で約200万円の追徴課税を受けたと聞いています。
私自身も、浅草で民泊運営をしていた際に法人の経費計上で痛い目を見た経験があります。民泊用の備品をフィリピン渡航時にまとめて購入し、すべて法人の経費に計上したところ、税理士から「これは民泊事業とフィリピン不動産事業のどちらに帰属する経費か不明瞭」と指摘されました。結局、按分計算をやり直して修正申告する羽目になり、税理士への追加費用が約8万円かかりました。この経験から、経費は事業ごとに明確に区分すべきだと身をもって学びました。[INTERNAL_LINK_2]
また、海外金融機関で営業していた時代の同僚から聞いた話ですが、香港法人を経由してフィリピン不動産を購入するスキームを組んだ投資家が、日本のCFC税制(タックスヘイブン対策税制)に抵触し、法人の所得が個人に合算課税された事例もあります。多段階の法人を噛ませるスキームほど、税務当局の目は厳しくなると考えてください。
まとめ:フィリピン不動産の法人スキームは「設計」がすべて
この記事の要点3行
- フィリピン不動産の法人スキームによる節税は「正しく設計」すれば有効だが、事業実態のない法人は否認リスクが高い
- 法人維持コスト(年間50〜80万円)を上回る賃料収入・節税効果があるかをシミュレーションしてから判断すべき
- 日本側・フィリピン側の双方の税務処理、租税条約の活用、CFC税制の確認を怠ると想定外の追徴課税を受ける
次に取るべきアクション
フィリピン不動産×法人スキームの節税効果を最大化するには、まず正確な知識を得ることが最優先です。書籍やネット記事だけで判断するのではなく、実際に海外不動産投資を実行しているプロの話を聞くべきです。
私自身、初めてフィリピン不動産を購入する前にセミナーで情報収集を行い、現地マーケットの相場観やスキーム設計のヒントを得ました。独学で進めていたら、もっと大きな失敗をしていたはずです。
あなたがフィリピン不動産の法人スキームを検討しているなら、まずは無料セミナーで基本的な仕組みとリスクを理解することをおすすめします。オンラインで自宅から参加でき、質問もできるので、最初の一歩として最適です。

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