建設会社を1人で経営する場合、役員報酬をいくらに設定すればいいのか。この問いに正解を出せないまま損をしている1人社長は少なくありません。社会保険料・法人税・法人住民税均等割のバランスを無視すると、手元に残るお金が想定より大幅に減ります。本記事では、実際に法人を設立して運営している私・Christopherが、建設会社の1人社長向けに役員報酬の相場感と5つの試算基準を具体的な数字で解説します。
建設1人法人の役員報酬「相場感」を正しく掴む
「相場」という言葉が1人社長には危険な理由
建設会社 1人 相場という検索をすると、「月額30万円前後」「年収360万円程度」といった数字がよく出てきます。ただし、この数字は従業員を抱える中小建設業の平均値に近く、マイクロ法人の1人社長にそのまま当てはめると危険です。
1人社長の場合、役員報酬は「自分への給与」であると同時に、「社会保険料の算定基礎」「所得税・住民税の課税ベース」「法人の利益を圧縮するコスト」という3つの顔を持ちます。相場に合わせるのではなく、自分の法人の収支構造に合わせて設計することが先決です。
建設業のマイクロ法人は、現場の繁閑差が大きく、売上が月によって数十万円から数百万円まで振れることがあります。年間を通じた売上見込みを先に試算してから、役員報酬の額を決める順序が重要です。
建設業マイクロ法人の年商別・役員報酬の目安帯
一般的な目安として、建設業の1人法人が取りやすい役員報酬の帯を整理します(あくまで概算であり、個別の状況によって異なります)。
年商500万円前後の規模では、月額10〜15万円程度に抑え、社会保険料の負担を最小化しながら法人に利益を残す選択が現実的です。年商1,000万円前後なら月額20〜30万円の設定が検討圏に入りますが、この帯は社会保険料と所得税が両方跳ね上がる「中途半端ゾーン」でもあります。年商1,500万円を超えてくると、月額30〜40万円でも法人側に一定の利益を残しやすくなります。
大切なのは「いくら取れるか」ではなく「取った後に法人・個人の両方でどれだけ残るか」という視点です。この試算なしに役員報酬を決めると、後から後悔することになります。
私が法人を作って直面した「役員報酬ゼロ」という選択
設立初期に役員報酬を抑えた実際の判断プロセス
私は2026年に東京都内で株式会社を1人で設立しました。建設業とは業種が異なりますが、マイクロ法人の役員報酬設計で直面する問題は共通しています。設立直後、私が最初に悩んだのも「役員報酬をいくらにするか」という問いでした。
結論として、設立初期は役員報酬を極力抑え、利益を法人内部に留保する方針を選びました。理由は単純で、売上がまだ安定していない段階で役員報酬を高く設定すると、社会保険料の負担が先行して手元資金を圧迫するからです。役員報酬は原則として事業年度の途中で変更できません。設定を誤ると1年間その金額を維持し続ける必要があり、売上が落ちた月に資金繰りが一気に苦しくなります。
「役員報酬は”いくら取るか”より”取らない選択”も戦略になる」というのが、実際に法人を運営してみた率直な感想です。特に設立1期目は、固定費を低く抑えて生き残ることを優先しました。
第1期ゼロ申告・税理士を入れなかった理由
売上が本格化する前の第1期は、税理士を入れずに自分でゼロ申告する判断をしました。税理士への顧問料は年間10〜30万円が一般的な相場感です。売上が小さい時期に固定費としてかかり続けると、費用倒れになるリスクがあります。
実際に自分でゼロ申告を経験して分かったのは、「制度の知識より、期限と書類の管理でつまずく」という現実です。税理士サイトには制度の解説が丁寧に書かれていますが、「実際に何をどの順番でやるのか」という手続きの現実は、当事者になってみないと分かりません。役員報酬の設定も同じで、知識として理解していても、実際の数字に落とし込む作業は思ったより煩雑です。
役員報酬の額は定款に定める必要はありませんが、株主総会議事録(1人会社なら代表者が同意した記録)として残す必要があります。この手続きを省いてしまうと、税務調査時に損金算入を否認されるリスクがあります。
役員報酬5基準で試算する方法
基準①〜③:税・社保・手取りの3軸から見る
役員報酬を設計するうえで私が実際に使った試算の枠組みを紹介します。建設業の1人社長が年商1,000万円を想定した場合で考えてみましょう。
基準①:法人税の最適化ライン。法人の利益が800万円を超えると、法人税の税率が段階的に上がります(中小法人の軽減税率の適用限界)。役員報酬を増やして法人利益を800万円以下に抑えることで、法人税の実効税率を低く維持できます。年商1,000万円で経費が300万円なら、法人利益は700万円。役員報酬ゼロでも軽減税率の範囲内に収まります。
基準②:所得税の最適化ライン。個人の課税所得が695万円を超えると所得税率が23%になります(一般的な速算表ベース)。役員報酬として取る額が大きくなりすぎると、個人側の所得税・住民税が重くなります。給与所得控除を差し引いた後の課税所得で考える必要があります。
基準③:手取り額の確保ライン。生活費として月20万円が必要なら、役員報酬を月25〜30万円に設定して社会保険料・所得税の源泉徴収を考慮した手取りを確保する計算が必要です。この手取り逆算が現実的な出発点になります。
詳しい法人化のメリット・デメリットについては青色専従者 法人化 後 切替|失敗しない5ステップ2026最新も参考にしてください。
基準④〜⑤:社会保険と建設業許可の2軸を加える
基準④:社会保険料の最適化ライン。役員報酬が月額20万円の場合、標準報酬月額が20万円となり、健康保険料と厚生年金保険料の合計(会社負担+本人負担)は一般的に月5〜7万円程度になります(協会けんぽの料率による)。この社会保険料は法人の経費になりますが、法人と個人の両方から出ていくコストとして認識する必要があります。役員報酬を月15万円以下に抑えると社保負担が大幅に軽減されます。
基準⑤:建設業許可の経営管理責任者要件。建設業許可を取得・維持するには、経営業務の管理責任者としての実績が必要です。役員報酬ゼロ・実態なしの法人では、許可申請時や更新時に問題が生じる場合があります。許可の維持を視野に入れるなら、役員としての実態を示せる報酬設定が求められます。建設 法人化を検討する場合は、許可要件と役員報酬の整合性を事前に確認することを強くおすすめします。
失敗談:法人住民税均等割の盲点に気づかなかった
赤字でも7万円が消える「均等割」の現実
建設業の1人社長が法人化を検討するとき、「赤字なら税金はかからない」と思いがちです。しかし法人住民税には均等割という固定課税があります。東京都の場合、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人でも、都民税均等割と区市町村民税均等割の合計で年間7万円程度が課税されます(自治体によって異なります)。
この7万円は売上ゼロ・赤字でも関係なく発生します。法人を設立した瞬間から毎年かかり続けるコストです。建設業マイクロ法人の1人社長が年間の固定費を試算する際に、法人住民税均等割を見落とすと、実際の手残りが想定より少なくなります。
私が実際に法人を立ち上げた後に「作った後が本番だ」と痛感した理由の一つが、この種の固定費の積み重ねです。均等割・登記費用・会計ソフト代・登記情報の更新管理など、売上に関係なく出ていくコストを事前にリスト化しておくことが、法人運営の現実対策になります。
法人口座が作れなかった時に初めて気づいた「信用コスト」
役員報酬の設計とは直接関係ないように見えますが、法人の信用力は役員報酬の実態とも連動しています。実際に法人口座の審査に落ちた経験から言うと、「法人を作っただけでは何も信用されない」という現実があります。
メガバンクにも大手ネット銀行にも審査で落ちました。落ちても理由は教えてもらえません。事業実態をどう示すかが全てで、「順番は実績→信用→口座」だと痛感しました。建設業では請負契約書・工事台帳・入金実績が事業実態の証拠になります。これらをきちんと整備した法人は、口座開設でも役員報酬の合理性説明でも、税務調査でも有利に働きます。
1人社長 役員報酬の設定は、単なる数字の問題ではなく、法人の信用と実態を作り込む作業の一部です。マイクロ法人で資産管理会社の作り方|設立手順と節税効果を解説では法人口座開設の実務についてさらに詳しく解説しています。
私が選んだ月額設定と、あなたへの結論
建設1人社長が役員報酬を設計するときの5つのチェックポイント
- 年間売上見込みを先に試算し、役員報酬を「残った利益から逆算」ではなく「先に設計してから利益を確認」する順序で進める
- 月額15万円以下に抑えると社会保険料の負担が軽減されるが、建設業許可の経営実態要件と照らし合わせた確認が必要
- 法人住民税均等割(年約7万円)・会計ソフト・司法書士費用などの固定費を先にリストアップし、役員報酬の下限を確認する
- 役員報酬は事業年度開始から3か月以内に決定し、株主総会議事録(定期同額給与の要件)として記録を残す
- 設立初期は税理士なしで対応できる局面もあるが、役員報酬の設定と社保の最適化は専門家への相談を一度は行うことで費用倒れを避けやすくなる
「建設会社 1人 相場」より「自分の法人の最適値」を探してほしい
建設会社 1人 相場という検索で辿り着いた方に、最後に伝えたいことがあります。相場は参考値でしかありません。月額20万円が「建設業の1人社長に多い数字」だとしても、あなたの法人の収支・社保戦略・建設業許可の要件・個人の生活費が異なれば、最適な金額は変わります。
私が2026年に法人を設立して運営してきた中で学んだのは、「制度の建前より、自分の数字を具体的に試算した人が得をする」という単純な事実です。社会保険 最適化も法人住民税均等割の対策も、知識として知っているだけでは意味がなく、自分の売上・経費・目標手取りに当てはめて初めて機能します。
法人の設立手続きは、クラウド会計ソフトを活用すれば専門家に丸投げしなくても自分で進められます。ただし「作った後」の役員報酬設計・社保最適化・申告管理が本番です。まずは会社設立の書類作成から動き始めてみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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