「うちの会社はいくらまで借りられるのか?」——資金調達を考える経営者なら、誰もが一度は抱く疑問です。実は、月商と融資可能額の計算式にはシンプルな目安があります。この記事では、月商・融資可能額・計算の基本公式から実務的な注意点まで、AFP資格と法人経営の実体験をもとに具体的に解説します。
月商と融資可能額の計算式:まず結論から
一言で言うと「月商の3〜6倍」が融資可能額の目安
結論を先に言います。一般的な金融機関が事業性融資を検討する際の目安は、「月商の3〜6倍」です。たとえば月商が500万円の会社であれば、1,500万円〜3,000万円が融資可能額のスタートラインになります。
ただし、これはあくまでも「入口の目安」です。実際には業種・業歴・財務内容・保証の有無によって上下します。まずこの数字を基準として頭に入れておいてください。
より精緻に試算する場合は、「年商(月商×12)×0.5〜1.0倍」という年商ベースの計算式も使われます。年商1,200万円(月商100万円)の会社なら、600万円〜1,200万円が一つの目安です。
なぜ「月商の3〜6倍」という結論になるのか
- 返済能力の根拠になるから:金融機関は「この会社が毎月いくら返済できるか」を最重視します。月商に対して過大な借入は返済比率が上がりすぎるため、3〜6倍が現実的な上限ラインとして定着しています。
- 日本政策金融公庫の審査基準と合致するから:公庫の創業融資・一般融資では、売上高(月商)に対する借入残高の比率が審査の重要指標の一つです。既存借入を含めて年商の1倍を超えると審査が厳しくなる傾向があります。
- 銀行の内部格付けモデルが売上高を重視するから:信用格付けモデルでは、売上高・売上総利益・営業利益がそれぞれスコアリングに組み込まれています。月商が高いほど格付けが上がり、融資可能額も連動して大きくなります。
私が実際に法人融資を申し込んだ時の話
会社設立2年目、月商80万円で融資に挑んだ経験
私がはじめて法人として銀行融資を申し込んだのは、株式会社を設立してから2年目のことでした。当時の月商は平均80万円程度。年商に換算すると約960万円です。
AFP資格を持っていた私は「計算式通りなら500万〜800万円は借りられるはず」と踏んでいました。ところが、最初に相談した地方銀行の担当者から返ってきた言葉は「決算2期分がないと、なかなか難しいですね」というものでした。設立2年目だったため、決算書が1期分しかなかったのです。
結果的にその銀行では希望額を下回る300万円しか引き出せませんでした。月商の約3.75倍という数字は確かに目安の範囲内でしたが、業歴の短さがネックになり、上限には程遠い結果になったのです。あの時の悔しさは今でも鮮明に覚えています。
そこから学んだこと——数字で語る融資の現実
この経験から学んだ最大の教訓は、「月商の倍率はあくまでも天井であり、業歴・財務内容・保証の有無が実際の融資額を決める」という事実です。
その後、設立3年目に決算書2期分が揃った段階で再度申し込んだところ、同じ銀行から800万円の融資を受けることができました。月商は当時90万円(年商約1,080万円)に成長していたため、年商対比で約0.74倍。これが現実的な着地点でした。
また、海外金融機関での営業経験から言えば、海外では不動産担保があると融資評価が大きく変わります。私がフィリピン(マニラ)に保有する物件を活用して現地で資金調達した際は、担保評価額の70%が上限ラインでした。日本の事業融資とは評価軸が根本的に異なります。
月商から融資可能額を試算する具体的な手順
ステップ別・融資可能額の計算フロー
融資可能額を自社で試算する際は、以下のステップで進めてください。
| ステップ | 内容 | 計算例(月商100万円の場合) |
|---|---|---|
| ① | 直近12ヶ月の平均月商を算出 | 月商:100万円 |
| ② | 年商を計算(月商×12) | 年商:1,200万円 |
| ③ | 融資可能額の下限を計算(月商×3) | 下限:300万円 |
| ④ | 融資可能額の上限を計算(月商×6) | 上限:600万円 |
| ⑤ | 既存借入残高を差し引く | 既存200万円 → 実質上限400万円 |
| ⑥ | 業歴・財務・担保で補正する | 業歴3年以上なら上限側へ、1年未満なら下限側へ |
重要なのはステップ⑤です。既存の借入残高(リース債務・カードローン含む)を必ず差し引いてください。金融機関は「これ以上貸したら全体の借入が月商の何倍になるか」を必ず計算しています。
また、売上総利益率(粗利率)が高い業種——たとえばIT・コンサル・士業——は、同じ月商でも返済余力が大きいとみなされ、倍率が上に振れる傾向があります。逆に粗利率が低い卸売業や建設業では、月商が高くても実質的な返済力が低く評価されがちです。
初心者が最初にやるべきこと
融資を検討し始めたばかりの経営者がまず取り組むべきは、「自社の月商・既存借入残高・粗利率」の3つを一枚の紙に書き出すことです。この3つが揃えば、概算の融資可能額は10分で試算できます。
次に、試算結果をもとに日本政策金融公庫か信用保証協会付き融資のどちらが自社に向いているかを判断します。創業から5年未満であれば公庫の「一般貸付」または「新創業融資制度(現:スタートアップ創出促進貸付)」が第一候補です。5年以上の業歴があり黒字決算が続いているなら、プロパー融資も視野に入ります。詳しい比較は[INTERNAL_LINK_1]こちらの記事「日本政策金融公庫とプロパー融資の違い」も参考にしてください。
融資可能額の計算でやりがちな失敗と注意点
よくある失敗3つ
-
月商を「最大値」で計算してしまう:
繁忙期の月商だけを根拠に融資可能額を試算し、実際より大きい金額を銀行に提示するケースが多発しています。金融機関は直近12ヶ月の平均値だけでなく、最低月・変動幅も確認します。「先月は1,000万円でした」という一点突破は通用しません。直近12〜24ヶ月の平均月商で計算するのが正解です。 -
既存借入を申告漏れする:
信用情報機関(CIC・JICC・全銀協)には法人代表者の個人借入も記録されています。カードローン・住宅ローン・保証債務を隠して申告すると、審査段階で発覚し、最悪の場合は否決どころか今後の取引に影響します。全額正直に開示してください。 -
赤字決算の影響を軽視する:
月商が順調でも、直近決算が赤字だと融資評価は大幅に下がります。税引後純利益がマイナスの場合、金融機関は「返済原資がない」と判断します。節税目的で利益を圧縮しすぎるのは、融資を考えるなら逆効果です。
私や周囲で実際に起きた失敗例
東京・浅草で民泊を運営していた頃、同じエリアの知人経営者が融資申請で大きなミスをしました。彼は民泊の繁忙期(春と秋)の月商だけを根拠に事業計画書を作成し、「月商150万円ベースで年商1,800万円」と銀行に提示したのです。
ところが実際の閑散期(夏・冬)は月商が40〜50万円まで落ち込み、12ヶ月平均では月商90万円程度でした。銀行の担当者は過去の通帳コピーを精査し、計画と実態の乖離を即座に指摘。融資額は希望の半分以下に圧縮され、しかも金利条件も不利になりました。
民泊・季節業・イベント業など売上の波が大きいビジネスモデルでは、月商の「平均値と最低値の両方」を自分で事前に把握しておくことが不可欠です。私自身も浅草の民泊運営を通じて、売上の季節変動を資金計画に織り込む重要性を痛感しました。融資後の返済計画については[INTERNAL_LINK_2]「返済シミュレーションの作り方」も合わせて確認しておいてください。
まとめ:月商・融資可能額・計算の要点と次のアクション
この記事の要点3行
- 融資可能額の目安は「月商の3〜6倍」、年商ベースなら「年商の0.5〜1.0倍」が基本計算式。ただし既存借入残高を必ず差し引いて実質可能額を算出すること。
- 月商は「直近12〜24ヶ月の平均値」で計算する。最大値・繁忙期ベースで試算すると金融機関との乖離が生じ、審査で不利になる。
- 業歴・財務内容・担保・保証の有無が最終的な融資額を左右する。月商の倍率はあくまでも天井であり、決算書の中身と既存借入が実質上限を決める。
次に取るべきアクション
計算式を理解したら、次のステップは「自社の具体的な融資可能額を専門家に診断してもらうこと」です。自己試算には限界があり、業種・業歴・財務状況によって実際の融資可能額は大きく変わります。
私も法人設立初期は専門家への相談なしに動いて時間をロスしました。今なら無料で融資可能額の診断ができるサービスがあります。まずはプロの目線で自社の現在地を把握してください。それが最速で資金調達を実現するための第一歩です。

コメント