「これは福利厚生費として落とせるのか?」——法人の代表になって最初に頭を悩ませたのがこの問いでした。私はAFP(日本FP協会認定)と宅地建物取引士の資格を持ち、株式会社を設立・運営していますが、税務署に目をつけられない福利厚生費の範囲を正確に把握するまで、かなりの試行錯誤を重ねました。この記事では、私が実務で整理した7つの論点を2026年版として徹底解説します。
法人福利厚生費の経費範囲:まず結論から答えます
一言で言うと「全従業員に平等に提供され、金額が社会通念上相当なもの」が経費になる
福利厚生費として損金算入できる支出の要件は、突き詰めると2つです。「①役員・従業員全員を対象にしていること」と「②支出額が世間の常識から見て過大でないこと」——この2軸で判定します。
どちらかが欠けると、税務調査で「給与」や「役員賞与」として認定され、法人税だけでなく所得税・社会保険料の追徴まで発生します。私は設立初年度にこの認識が甘く、後述する痛い経験をしています。
なぜその結論になるのか(根拠3つ)
- 法人税法基本通達9-3-7(慶弔見舞金等):「社会通念上相当と認められる金額」であれば給与課税しないと明記されており、「相当額」の判断基準が経費認定の根拠になります。
- 所得税基本通達36-30(職場のレクリエーション費用):社員旅行や懇親会費用は「全員参加・一人あたり10万円以内・4泊5日以内」という実務上の目安が税務解釈として定着しています。
- 健康保険法・労働安全衛生法の整合性:定期健康診断費用や人間ドック費用(法定健診を超える部分も含む)は、従業員の安全配慮義務と結びつくため、法人側の費用として認められる根拠が強くなります。
私が代表として実際に直面した福利厚生費の失敗と学び
設立2年目、税務署から「これは給与です」と言われた話
私が株式会社を設立して2年目(2020年)のことです。当時、私を含めて役員2名・従業員3名という小所帯でした。「チームビルディングのため」という名目で、私と特定の役員2名だけで沖縄に2泊3日の出張を組み、旅費・宿泊費・飲食費合わせて約38万円を福利厚生費で計上しました。
翌年の税務調査(任意調査)で担当官に真っ先に指摘されたのがこの支出です。「全従業員が対象になっていない」「役員だけの旅行は役員給与に該当する」との判断で、38万円分が役員賞与に認定されました。結果として法人税の修正申告に加え、役員賞与は損金不算入のため約12万円の追加納税が発生しました。
当時の私は「業務上の意味がある出張だから大丈夫」と高を括っていました。しかし税務上の福利厚生費は「目的」より「対象者の範囲」が問われます。これが私の原体験です。
そこから学んだこと(数字で語る)
この経験から私が設けたルールは明確です。福利厚生名目の支出は必ず「全従業員+役員」を対象とした書面(稟議書・社内規程)を事前に作成し、一人あたり単価を計算して記録に残す——という3ステップを義務付けました。
具体的な数字で言うと、忘年会・新年会は一人あたり予算を8,000円以内に設定(10万円基準の余裕を持たせた設定)、社員旅行は一人あたり5万円以内・3泊4日以内を社内規程に明記しています。この基準を設けてから3年間、税務上の指摘はゼロです。AFP(ファイナンシャルプランナー)として家計と法人財務の両方を見てきた経験上、「ルールの文書化」が最大のリスクヘッジになります。
福利厚生費として経費計上できる7論点を比較整理する
7つの論点別・経費可否チェックリスト
以下の表で、実務上よく問題になる7論点を整理します。「○」は要件を満たせば損金算入可、「△」は条件付き、「×」は原則不可を示します。
| 論点 | 可否 | 主な条件・上限目安 |
|---|---|---|
| ①社員旅行・レクリエーション | △ | 全員対象・一人10万円以内・4泊5日以内 |
| ②慶弔見舞金 | ○ | 社内規程あり・社会通念上相当額(結婚祝い3万円前後が目安) |
| ③健康診断・人間ドック | ○ | 全従業員対象。役員のみ高額人間ドックは給与課税リスクあり |
| ④食事補助・社員食堂 | △ | 従業員負担50%以上かつ月額3,500円以内の会社負担分が非課税 |
| ⑤資格取得・研修費用 | △ | 業務関連性が必須。個人的資格取得(例:趣味のスクール)は不可 |
| ⑥フィットネスジム・スポーツ施設 | △ | 法人契約で全員利用可が条件。特定個人への現物給与扱いに注意 |
| ⑦社宅・住宅手当 | △ | 社宅は法定計算式で賃料相当額を徴収すれば福利厚生費。住宅手当は給与課税 |
私が特に注意しているのは⑥のジム費用です。私はフィリピン・マニラとセブ、ハワイに不動産を保有しており、海外出張が多い環境にあります。「体力維持のため」とジム費用を計上したくなる気持ちはわかりますが、法人契約でなく個人名義のジム会費は100%給与課税されます。必ず法人名義の契約に切り替えてください。
初心者が最初にやるべきこと
まず「福利厚生規程」を1枚でも作成することです。規程がないまま支出を重ねると、税務調査時に「恣意的な支出」と判断されるリスクが高まります。規程には「支給対象者(全役員・全従業員)」「支給事由」「支給上限額」「申請手続き」の4項目を盛り込めば十分です。
次に、支出ごとに「対象者リスト」と「領収書」をセットで保管する習慣をつけます。私は会計ソフトで仕訳を入力する際、メモ欄に参加人数と一人あたり単価を必ず記載しています。この2ステップだけで、税務調査における説明コストが大幅に下がります。[INTERNAL_LINK_1]
福利厚生費で失敗しないための注意点と実例
よくある失敗3つ
- 「業務上必要」という主観的理由だけで計上する:目的より「全員対象か」「金額は相当か」が税務上の判断軸です。どんなに業務関連性を主張しても、特定役員だけが受益する支出は給与課税されます。私が沖縄の件で痛い目を見たのはまさにこれです。
- 月額の食事補助で従業員負担割合を誤る:食事補助の非課税要件(従業員負担50%以上・会社負担月3,500円以内)は意外に見落とされます。「昼食代を全額会社負担にしている」というケースで、月4,000〜5,000円の現物給与が発生していた事例を複数見てきました。
- 社宅の賃料相当額を徴収しない:宅地建物取引士として不動産の知識がある私が特に強調したいのがこの点です。法人が借り上げた物件を役員・従業員に無償提供した場合、法定計算式で算出した賃料相当額を徴収しないと、その全額が給与課税されます。「会社名義で借りているから大丈夫」は完全な誤解です。
私や周囲で起きた実例
私が東京・浅草エリアで民泊を運営していた時期(2019〜2021年)、民泊業仲間の法人オーナーが「従業員の宿泊研修」名目で自社民泊物件を無償使用させていたケースがありました。税理士から「適正賃料の徴収がないと現物給与になる」と指摘され、過去2年分の修正申告を余儀なくされています。法人と不動産が絡む福利厚生は、特に慎重な判断が必要です。
また、私が海外金融機関での営業経験を持つ関係で、外資系企業の福利厚生制度を見る機会がありました。海外では「ウェルネス手当」として現金支給するケースが多いのですが、日本では現金支給は原則給与課税される点に注意が必要です。日本法人では「現金」より「現物・サービス提供」の形が税務上有利になります。[INTERNAL_LINK_2]
まとめ:法人福利厚生費を正しく活用するために
この記事の要点3行
- 福利厚生費の損金算入要件は「全員対象」と「社会通念上相当な金額」の2軸で判断する。どちらが欠けても給与課税リスクが発生します。
- 社員旅行・食事補助・社宅・ジム費用など論点ごとに上限額・契約形態・規程の有無が異なるため、7つの論点を個別に整理して社内規程に落とし込むことが最重要です。
- 設立初期から「福利厚生規程の作成」「対象者リストと領収書のセット保管」「会計ソフトでの一人あたり単価記録」を習慣化すれば、税務調査でも自信を持って対応できます。
次に取るべきアクション
福利厚生費の経費処理を正確に行うには、仕訳ルールの統一と証憑管理が欠かせません。私が代表として実際に使い続けているのが、クラウド型の会計ソフトです。仕訳の自動化で「一人あたり単価計算を毎回手動で行う」という手間がなくなり、税務調査対応に必要なデータも即座に出力できます。
特に法人設立初期の経営者や、顧問税理士へ渡すデータを自分で整理したい方には、まず無料から始められるクラウド会計ソフトで仕組みを作ることをお勧めします。福利厚生費の勘定科目設定から決算書作成まで一元管理できる点が、私が選んだ最大の理由です。

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