「1人社長の社員旅行なんて経費にならないでしょ?」と思っていませんか。実は要件を満たせば、マイクロ法人でも社員旅行を福利厚生費として計上できます。私が2026年に東京都内で株式会社を設立した際、この問題に正面から向き合い、福利厚生規程を整備した実体験から、社員旅行を1人社長が経費化するための5要件と否認回避の具体的なポイントを解説します。
1人社長と社員旅行の経費化:前提を正しく押さえる
「社員旅行=福利厚生費」が成立する法的な根拠
法人税法上、社員旅行を福利厚生費として損金算入するためには、その支出が「使用人の慰安のために通常要する費用」であることが求められます。国税庁の通達(法基通9-7-1)では、①旅行期間が4泊5日以内、②参加割合が全従業員の50%以上、という2つの数値基準が示されています。
1人社長の場合、役員1人だけが参加する旅行は「役員の個人的な旅行」と見なされやすい構造があります。しかし法人が適切な規程を持ち、事業目的との関連性を明確にすれば、福利厚生費として認められる余地は十分にあります。ここを曖昧にしたまま経費処理すると、税務調査で否認されるリスクが高まります。
マイクロ法人特有の「参加割合50%以上」問題
一般的な会社では「従業員の50%以上が参加すること」が要件ですが、1人社長のマイクロ法人では役員兼唯一の従業員が1人しかいません。この場合、参加割合は原理上100%になりますから、数値基準は自動的にクリアできます。
問題は別にあります。従業員が存在しない純粋な役員1名の法人では「使用人の慰安」という性質が薄れ、役員報酬の一部とみなされる可能性があります。だからこそ、後述する福利厚生規程の整備が欠かせません。規程という「形式」が、旅行の「性質」を法人の業務関連コストとして裏付ける根拠になるのです。
私が法人設立後に直面した福利厚生規程の整備
規程なしで旅行費用を計上しかけた苦い経験
2026年春、私は東京都内で株式会社を設立しました。浅草エリアでインバウンド向け民泊事業を立ち上げる準備の中、決算前に「視察も兼ねた旅行費用を経費にできないか」と考えたのが最初のきっかけです。
総合保険代理店に勤めていた頃、マイクロ法人を経営する個人事業主出身のお客様から「社員旅行の費用を経費にしたら税務調査で全額否認された」という話を何度か聞いていました。当時は「規程がなかったんだろうな」と他人事のように聞いていましたが、いざ自分が法人を持つ立場になると、同じ穴に落ちかけていた自分に気づきました。
設立直後の法人には就業規則も福利厚生規程もゼロの状態でした。このまま旅行費用を「福利厚生費」の科目で計上するのは危険すぎます。AFP(日本FP協会認定)として節税の理屈は知っていても、実際に自分の会社の書類を整える手間は想像以上でした。
私が整備した規程の中身と所要時間
私が作成した福利厚生規程には、①社員旅行の実施目的(従業員の士気向上・慰安)、②実施頻度(年1回以内を原則とする)、③費用の上限(1人あたり10万円以内、一般的な目安として)、④参加対象(在籍6ヶ月以上の役員・従業員)、⑤不参加者への金銭支給を行わない旨、の5項目を明記しました。
規程の作成自体は2日ほどで完成しましたが、社労士に確認を依頼したところ「不参加者への金銭補填を禁ずる条項が重要」と指摘を受けました。これは後述する否認パターンに直結する論点です。規程の整備は税理士・社労士への相談と並行して進めることを強くお勧めします。個別の状況によって適切な内容は異なりますので、専門家への確認は必須です。
福利厚生費として認められる5要件の詳細
国税庁通達が定める数値基準と運用上の注意点
税務実務で参照される5つの要件を整理します。①旅行期間が4泊5日以内であること。②全従業員の50%以上が参加していること。③費用が社会通念上相当な範囲内であること(1人あたり10万円前後が一般的な目安とされています)。④不参加者に対して金銭を支給しないこと。⑤会社として福利厚生規程に基づき実施していること。
特に④「不参加者への金銭支給禁止」は見落とされやすいポイントです。「旅行に行けない人に同額の現金を渡した」というケースは、旅行費用全体が給与扱いになりかねません。善意の行為が税務上のリスクを生む典型例です。
「事業関連性」を明示する記録の残し方
旅行の内容が観光一色では否認リスクが上がります。視察・業務ミーティング・研修の要素を一部組み込み、その記録を残すことが重要です。私が浅草での法人設立後に行った旅行では、現地民泊施設の視察を旅程に組み込み、視察メモと写真を法人の書類として保管しています。
旅行の日程表・領収書・参加者リスト(1人でも名簿は作る)・視察レポートをセットで保管しておくと、税務調査時の説明に一貫性が出ます。「記録がない=業務性がない」と判断されるリスクを下げるための地道な作業ですが、1人社長の節税では書類管理の習慣が長期的な信頼につながります。青色専従者 法人化 後 切替|失敗しない5ステップ2026最新
否認される典型3パターンと回避策
パターン①「規程なし」「②家族同伴で全額計上」「③過大な費用」
税務調査で社員旅行費が否認されるケースには、パターンが収束しています。第一は規程がないまま計上するケースです。前述のとおり、根拠書類のない支出は「個人的な旅行代を会社に付け回した」と判断されやすくなります。
第二は家族同伴分を全額福利厚生費にするケースです。配偶者や子どもは会社の従業員ではないため、家族分の費用は役員への現物給与として給与課税される可能性があります。第三は費用が社会通念を超えるケースです。1人あたり30万円・40万円といった金額は「通常要する費用」の範囲を逸脱していると見なされるリスクが高まります。一般的な目安として1人あたり10万円前後が参照されますが、詳細は税理士に個別確認を推奨します。
保険代理店時代に見た「否認された相談者」の共通点
総合保険代理店に勤めていた頃、法人契約の保険相談で来店された1人社長のお客様が「去年の税務調査で社員旅行費をまるごと否認された」とおっしゃっていました。話を聞くと、規程がなく、家族3人分の旅行費用を全額福利厚生費に計上し、しかも沖縄5泊6日だったとのことでした。4泊5日の上限も超え、家族同伴も問題視され、規程もないという三重のリスクが重なっていたわけです。
そのお客様は追徴税額を支払った後、「最初に規程だけでも作っておけばよかった」と話していました。その言葉は今でも記憶に残っています。規程整備のコストは税理士への相談費用数万円程度ですが、否認された場合の追徴税額は場合によってはその数十倍になります。コストとリターンを考えれば、規程整備は先行投資として合理的です。マイクロ法人で資産管理会社の作り方|設立手順と節税効果を解説
家族同伴時の処理と注意点
家族分の費用は「給与」として処理するのが安全
配偶者や子どもを同伴する場合、家族分の旅行費用を福利厚生費に含めることは税務上のリスクを伴います。家族は法人の従業員ではないため、その費用は原則として役員報酬・給与の現物支給と見なされます。つまり、家族分は給与として課税処理するか、役員個人が自腹で負担する形が現実的な選択肢です。
配偶者が法人の役員や従業員として登記・雇用されている場合は、参加者として認められる可能性があります。ただし名目だけの登録は問題になります。実態として業務に関与していることと、適切な給与・役員報酬を支払っていることが前提条件です。
「混合計上」で否認リスクを下げる実務的な処理法
現実的な対応として、旅行費用を「役員分(福利厚生費)」と「家族分(役員給与または個人負担)」に明確に分けて処理する方法があります。例えば旅行費用の合計が20万円で、役員1人分が10万円・配偶者分が10万円であれば、前者を福利厚生費、後者を役員給与(現物)として処理するか、配偶者分は役員個人が会社に返金する形を取ります。
この「分けて計上する」という処理は、帳簿上の透明性を高め、税務調査での説明を明快にする効果があります。「混在させない」という原則は、1人社長の節税全般に通じる考え方です。税理士と連携し、年度の旅行計画を立てる段階から処理方針を決めておくことをお勧めします。個別の税額・控除額については必ず専門家にご確認ください。
まとめ:1人社長の社員旅行を経費化するための要点整理とCTA
5要件と実務チェックリスト
- 旅行期間は4泊5日以内に収める
- 従業員全員(1人社長なら役員本人)が参加する形式を整える
- 1人あたりの費用は社会通念上の相当額(一般的な目安として10万円前後)に抑える
- 不参加者への現金支給を行わない旨を福利厚生規程に明記する
- 旅程・領収書・参加者名簿・視察記録をセットで保管する
- 家族同伴分は役員給与(現物)または個人負担として分離処理する
- 規程は設立直後に整備し、税理士・社労士に確認を取る
法人設立の「土台」が節税の出発点になる
私が法人設立後に痛感したのは、「節税は設立後ではなく、設立時の設計で大半が決まる」ということです。福利厚生規程を含む各種規程類、役員報酬の設定、社会保険の加入判断——これらはすべて、法人としての「土台」の話です。
社員旅行の経費化はその土台の上に成立する一つの手段に過ぎません。マイクロ法人の1人社長として節税を最適化するには、まず法人格の設計から見直すことが有効です。会社設立の書類作成から始められるサービスとして、マネーフォワード クラウド会社設立は設立コストを抑えつつ書類の準備を進めたい方に広く活用されています。法人設立を検討中の方は、ぜひ確認してみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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