株式会社の設立費用は「だいたい20万円前後」と聞いても、何にいくらかかるのかが分からないと動けません。私は2026年に東京都内で実際に1人で株式会社を設立しました。その経験をもとに、法人・株式・費用の全体像を定款認証・登録免許税・法人印鑑など7項目に分解して、総額と各費用のリアルな内訳を公開します。
株式会社設立費用の全体像と7項目の内訳
総額はいくらか:約20万〜25万円が現実的な目安
株式会社の設立にかかる費用は、法定費用だけでも最低限で約20万円かかります。内訳を整理すると、①定款の収入印紙代、②公証役場での定款認証手数料、③登録免許税、④法人印鑑作成費、⑤登記事項証明書・印鑑証明書の取得費、⑥資本金の払込に関わる費用、⑦専門家(司法書士・行政書士)への報酬、の7項目です。
このうち①〜⑥は自分で手続きしても避けられない「法定費用」です。⑦の専門家報酬だけが、自分でやるか外注するかで変わる「変動費」になります。私が実際に法人を作った時は、クラウド会計ソフトを活用して自分で手続きを進めたため、⑦をほぼゼロに抑えました。
一般的な目安として、専門家に依頼する場合は総額25〜30万円、自分で手続きする場合は20〜22万円程度と考えると現実に近いです。個人差があるため、あくまで概算としてご参考ください。
合同会社との費用比較:株式会社を選んだ理由
法人化を検討する際、「合同会社のほうが安い」と言われます。実際、合同会社の登録免許税は6万円で、株式会社の15万円と比べると9万円の差があります。定款認証も合同会社は不要なため、トータルで10万円以上安く設立できます。
それでも私が株式会社を選んだのは、対外的な信用力の問題です。取引先や将来の銀行融資を見据えると、「株式会社」という形式が与える印象は今もなお無視できません。設立コストで10万円節約するより、長期的な信用を取るという判断でした。費用だけで法人格を選ぶのは、後で後悔する可能性があります。
定款認証と収入印紙代の実額:電子定款で4万円節約できる
紙の定款と電子定款で費用が大きく変わる
定款認証にかかる費用は、大きく「収入印紙代」と「公証役場への認証手数料」の2つです。紙で定款を作成する場合、収入印紙4万円が必要です。一方、電子定款であればこの収入印紙代が不要になります。この差は見逃せません。
公証役場への認証手数料は資本金の額によって変わります。資本金100万円未満の場合は3万2,000円、100万円以上300万円未満は4万2,000円、300万円以上は5万2,000円が一般的な目安です(2026年時点・概算)。私の場合、少額の資本金で設立したため、この手数料は低いほうに収まりました。
電子定款には専用ソフトやICカードリーダーが必要で、自分で対応するのが難しい場合もあります。私はクラウド会計ソフトの定款作成機能を使うことで、電子定款に対応できました。これだけで4万円の節約になりますから、ツール選びは設立費用に直結します。
定款認証の当日に必要なものと見落としやすい費用
公証役場での定款認証には、認証手数料以外に謄本代が別途かかります。定款の謄本を2〜3部取得することが多く、1枚あたり250円程度が必要です。ページ数にもよりますが、謄本代だけで2,000〜3,000円前後かかります。
また、定款認証の際には発起人全員の印鑑証明書(市区町村発行)が必要です。この取得費用も1通あたり300〜500円程度かかります。1人で設立する場合は1通で済みますが、忘れると当日に手続きが止まります。小さな費用ですが、リストに入れておくべきです。
登録免許税15万円の内訳と節約できない理由
株式会社の登録免許税は最低15万円
登録免許税は、法務局への法人登記に必要な国に納める税金です。株式会社の場合、資本金の額に0.7%を掛けた金額か15万円のどちらか高いほうが課税されます。資本金が約2,143万円以下であれば、自動的に最低税額の15万円になります。
資本金100万円で設立した場合、100万円×0.7%=7,000円ですが、これは最低税額15万円を下回るため15万円が適用されます。つまり、資本金が少額であっても登録免許税は15万円で固定です。ここは節約できない部分と理解しておくべきです。
なお、登録免許税は収入印紙を購入して申請書に貼付する形で納めるのが一般的です。法務局近くの郵便局で購入できますが、15万円という大きな金額の収入印紙を一度に購入する体験は独特で、実際に手続きした時は少し緊張しました。
資本金の額をいくらに設定するか:費用面からの考え方
資本金の額は設立費用には直接影響しにくいものの(登録免許税の最低税額があるため)、設立後の税務や消費税の扱いに影響します。資本金1,000万円未満であれば設立1期目・2期目は消費税の免税事業者になれる可能性がある点は、多くのマイクロ法人オーナーが重視するポイントです(個別の要件は税理士に確認を)。
私は資本金を少額に設定しました。資本金は「多いほど信用が高まる」という考え方もありますが、個人が全額を払い込む必要があるため、設立直後のキャッシュフローを考えると現実的な額に抑えるのが合理的です。設立費用との関係では、資本金が2,143万円を超えない限り登録免許税は15万円で変わらない、という事実を押さえておくだけで十分です。
法人印鑑で失敗した実体験:数千円の差で後悔した話
法人印鑑セットの相場と私が選んで失敗したポイント
法人印鑑(代表者印・銀行印・角印のセット)は、設立登記に必ず必要です。相場は素材と彫刻方法によって大きく異なり、チタン素材で1万5,000〜3万円、黒水牛や本柘などの素材で8,000〜1万5,000円程度が一般的な目安です。
私が実際に法人を作った時、印鑑セットを急いで注文しました。設立手続きを早く終わらせたかったため、急ぎオプションを付けた結果、通常配送より数千円高い金額を支払いました。後から同じ品質の印鑑を通常納期で注文すれば十分間に合ったと気づき、単純に焦りが招いたコスト増でした。法人印鑑は設立登記の申請に必要ですが、登記申請日の直前まで余裕があります。急ぎオプションを選ぶ前に、スケジュールを冷静に確認することをおすすめします。
また、印鑑のサイズにも注意が必要です。代表者印は直径18mm前後、銀行印は16.5mm前後が一般的です。法務局の登記申請には代表者印が必須で、銀行口座開設の際には銀行印が必要になります。口座開設のことを見越して、最初からセットで揃えておくのが賢明です。
印鑑証明書の取得と電子証明書の選択肢
法人印鑑を法務局に登録すると、法人の印鑑証明書を取得できるようになります。この印鑑証明書は銀行口座の開設や各種契約に必要で、法務局の窓口やオンライン(登記事項証明書等の交付申請)で取得します。1通あたり450〜600円程度です(窓口・オンラインで異なる)。
なお、近年はマイナンバーカードを活用した電子認証を使えば、一部の手続きで紙の印鑑証明書が不要になるケースも増えています。ただし、銀行口座開設の審査では依然として紙の書類を求められることが多く、設立直後は印鑑証明書を複数枚取得しておくと手続きがスムーズです。
法人口座の開設については、私自身が設立直後にメガバンクや大手ネット銀行の審査に何度も落ちた経験があります。印鑑や書類を完璧に揃えても、事業実態が伴っていなければ審査は通りません。法人印鑑を用意することと、口座が開けることは別問題です。この点は後ほど詳しく触れます。青色専従者 法人化 後 切替|失敗しない5ステップ2026最新
専門家報酬を抑える判断軸:自分でやるか外注するか
司法書士・行政書士への報酬相場と自分でできる範囲
司法書士や行政書士に設立手続きを依頼した場合の報酬は、一般的に5万〜15万円程度が目安です。これに法定費用(定款認証・登録免許税など)が加わるため、専門家に丸投げすると総額30万円を超えることもあります。
一方、クラウド会計ソフトの会社設立サービスを使えば、定款の作成から公証役場・法務局への申請書類の生成まで、専門知識がなくても手続きを進められます。私が実際に法人を立ち上げた時も、このやり方で専門家報酬をほぼゼロに抑えました。「法人設立は思ったより自分でできる」というのが率直な感想です。
ただし、設立後の税務申告・社会保険の手続き・役員報酬の設計など、「作った後」の問題のほうが複雑です。設立手続き自体はツールで対応できても、法人運営のフェーズになると専門家の力を借りる場面が出てきます。費用を節約するなら「どこを自分でやって、どこを外注するか」を分けて考えることが大切です。
第1期に税理士を入れなかった判断とそのリスク
私は第1期(売上が本格的に立つ前)は税理士と顧問契約を結ばず、自分でゼロ申告を行う判断をしました。税理士の顧問料は年10〜30万円程度が一般的で、売上が小さい時期に固定費として支払い続けると費用倒れになりかねません。
ただし、この判断には前提があります。売上がほぼゼロで取引が単純な場合に限り、ゼロ申告は自分でも対応できます。売上が動き始めたり、複数の取引先が生まれたりした時点で、税理士に入ってもらうのが現実的です。「税理士は必要になってから」という判断は、設立初期の固定費を抑える有効な戦略ですが、無申告・申告漏れのリスクを自分で管理できる人に限られます。不安な場合は最初から専門家に相談することを強くおすすめします。マイクロ法人で資産管理会社の作り方|設立手順と節税効果を解説
株式会社設立費用のまとめと次のアクション
7項目の費用チェックリスト
- ①定款の収入印紙代:電子定款なら0円、紙なら4万円
- ②定款認証手数料(公証役場):資本金の額による・3万2,000円〜5万2,000円が目安
- ③定款謄本・印鑑証明書取得費:数千円程度
- ④登録免許税(法務局):最低15万円(資本金2,143万円以下は一律)
- ⑤法人印鑑セット:8,000円〜3万円程度(素材・納期による)
- ⑥登記事項証明書・法人印鑑証明書の取得費:各数百円〜
- ⑦専門家報酬(司法書士・行政書士):自分でやれば0円、依頼する場合は5万〜15万円程度
電子定款で手続きし、専門家報酬を抑えた場合の概算総額は約20〜22万円です。紙定款+専門家依頼なら25〜30万円以上になる可能性があります(個人差・状況により異なります)。
設立後が「本番」:書類より行動が先決です
私が実際に法人を作って痛感したのは、「設立手続きは終わりではなく始まり」だということです。登記が完了した後には、法人口座の開設・社会保険の加入手続き・税務署への届出・役員報酬の設計など、次々と対応すべき事項が出てきます。
私が設立直後にメガバンクや大手ネット銀行の法人口座審査に何度も落ちた経験は、今でもよく覚えています。書類を完璧に揃えても、実績のない新設法人は審査が厳しいのが現実です。「設立=口座が開ける」ではありません。ネット銀行から順番に実績を積み、信用を作っていく段階的なアプローチが現実的です。
設立手続きにかかる費用は20万円前後で概算できますが、その後の運営コスト・税務・社会保険の設計こそが法人化の本質です。まずは設立書類の作成から始め、手続きの全体像を把握することが一歩目です。クラウド会計ソフトを使えば、定款作成から登記申請書類の生成まで、自分で進めることができます。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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