法人設立で定款を作成するとき、事業目的の書き方ひとつで登記がやり直しになったり、銀行口座の開設を断られたりするケースがあります。この記事では、法人の事業目的に書いてはいけないNGワードを具体的にリストアップし、AFP・宅地建物取引士であり自ら株式会社を設立・運営している筆者Christopherの実体験を交えて解説します。定款作成中のあなたが同じ失敗をしないよう、最後まで読んでください。
法人の事業目的NGワードは「曖昧・違法・許認可無視」の3パターンに集約される
一言で言うと「法務局に弾かれる表現」と「銀行に嫌われる表現」を避ければ9割解決する
法人設立時に事業目的で失敗する人の大半は、「何となくカッコいいから」「将来やるかもしれないから」という理由で、曖昧な文言や許認可が必要な業種名を安易に入れています。しかし、事業目的は登記簿謄本に記載され、取引先・金融機関・行政機関が必ず確認する項目です。NGワードを1つでも入れると、登記の補正指示、法人口座の審査落ち、許認可申請の却下といった実害が発生します。
結論として、あなたが避けるべきNGワードは大きく3パターンに分類できます。「曖昧すぎる表現」「違法・公序良俗に反する表現」「許認可業種を無自覚に記載する表現」です。この3つを意識するだけで、定款作成の失敗リスクは大幅に下がります。
なぜその結論になるのか(3つの根拠)
- 会社法第27条の要件:事業目的には「適法性」「営利性」「明確性」が求められており、これを満たさない文言は法務局の登記官に補正を求められます。2006年の会社法施行以降、具体性の要件は緩和されましたが、明確性は依然として必須です。
- 金融機関の口座開設審査:メガバンク・ネット銀行を問わず、法人口座開設時に登記簿謄本の事業目的を必ず確認します。事業目的が曖昧だったり、実態とかけ離れた業種が大量に並んでいると「ペーパーカンパニーではないか」と疑われ、口座開設を拒否されるケースが増えています。
- 許認可申請への影響:宅地建物取引業、人材派遣業、飲食業など許認可が必要な業種は、定款の事業目的に正確な文言で記載されていなければ申請自体が受理されません。逆に、許認可を取得する予定がないのに記載すると、行政指導の対象になるリスクがあります。
私が株式会社を設立した時に犯した事業目的の失敗談
私が実際に法人設立で事業目的を書き直した時の話
私Christopherは株式会社の代表として法人を設立・運営していますが、正直に言うと、最初の定款作成で事業目的の書き方に苦労しました。当時、フィリピンのマニラとセブに不動産を保有しており、海外不動産のコンサルティング事業を法人で行いたいと考えていました。
最初に自分で書いた事業目的の一つが「海外における不動産事業全般」という文言でした。これが問題でした。司法書士に相談したところ、「不動産事業全般」という表現だと、宅地建物取引業に該当する業務を含むのか含まないのかが曖昧になると指摘されたのです。私は宅地建物取引士の資格を個人で持っていますが、法人として宅建業の免許を取得するかどうかは別の話です。
結局、「不動産に関するコンサルティング業務」「不動産の賃貸、管理及び運営」と具体的に分けて記載し、「宅地建物取引業」は将来の免許取得を見据えて別の項目として追加しました。この修正だけで定款の作り直しに約1週間かかり、設立スケジュールが後ろ倒しになった苦い経験があります。
そこから学んだこと(数字で語る)
この経験から、事業目的の書き方には明確なルールがあると痛感しました。私が定款を修正した際のコストと時間を数字でお伝えします。
まず、司法書士への追加相談料として約1万5,000円が発生しました。さらに、定款の電子認証を再度行う手間が増え、トータルで設立までに当初予定より8日間余計にかかりました。法人口座の開設申請も連動して遅れ、事業開始が約2週間後ろ倒しになったのです。
もし最初からfreee会社設立のようなツールを使っていれば、テンプレートに沿って事業目的を選択・入力できるため、こうしたミスは防げたはずです。実際に、2社目の法人設立を手伝った知人にはクラウドサービスの利用を強く勧め、結果として定款作成から登記申請まで5日間で完了しています。事業目的の文言チェックだけで数万円と1〜2週間を失うのは、起業家にとって大きな損失です。
事業目的のNGワード一覧と正しい書き方の比較
避けるべきNGワードと修正例の比較表
以下に、法人設立時に事業目的として使ってはいけない代表的なNGワードと、その修正例をまとめます。定款作成中のあなたは、この表と自分の原案を照らし合わせてください。
| NGワード・NG表現 | 問題点 | 修正例 |
|---|---|---|
| 「あらゆる事業」「すべての商業活動」 | 明確性を欠き、法務局で補正指示の可能性大 | 具体的な業種名を5〜15個程度列挙し、最後に「前各号に附帯する一切の事業」と記載 |
| 「コンサル業」「ビジネス支援」 | 略語・俗語は登記にふさわしくない。何のコンサルか不明確 | 「経営に関するコンサルティング業務」「不動産に関するコンサルティング業務」など分野を明示 |
| 「仮想通貨の発行・販売」 | 暗号資産交換業は金融庁への登録が必要(資金決済法)。無登録は違法 | 登録予定がなければ削除。関連事業なら「ブロックチェーン技術を活用したシステム開発」などに限定 |
| 「金融商品の販売」 | 金融商品取引業の登録が必要。無登録記載は口座開設審査で不利に | 登録予定がなければ削除。「ファイナンシャルプランニングに関する情報提供」など非登録業務に変更 |
| 「人材派遣業」 | 労働者派遣事業の許可が必要(厚生労働省)。許可なしに記載すると行政指導リスク | 許可取得予定がある場合のみ記載。なければ「人材に関するコンサルティング業務」「採用支援業務」に変更 |
| 「風俗営業」「賭博に関する事業」 | 公序良俗に反する、または特別法で厳しく規制される業種。銀行口座開設がほぼ不可能に | 合法的な範囲に限定し、「飲食店の経営」「イベント企画・運営」など具体的に記載 |
| 「不動産事業全般」 | 宅建業に該当するかどうか不明確。宅建免許の要否判断に支障 | 「不動産の賃貸及び管理」「不動産に関するコンサルティング業務」など業務内容を分割して記載 |
| 「輸出入業」(品目を特定しない) | 武器・薬物など規制品目を含む可能性がありと判断される | 「食品の輸出入及び販売」「日用品の輸出入及び卸売業」など品目を明示 |
この比較表を見てわかるとおり、NGワードの本質は「曖昧さ」「許認可の無自覚」「公序良俗への抵触」の3つです。修正例はいずれも業務範囲を具体的に絞り込むことで問題を解消しています。
初心者が最初にやるべきこと
定款作成が初めてのあなたがまず取るべきアクションは、事業目的のテンプレートを入手することです。ゼロから自分で文言を考えるのは非効率ですし、上記のようなNG表現に気づけないリスクがあります。
具体的には、freee会社設立などのクラウドサービスを使えば、業種を選択するだけで登記実績のある事業目的の文言が自動生成されます。これなら法務局で弾かれる心配がほぼありません。私自身、2回目以降の法人関連の手続きではクラウドツールを積極的に活用しています。
また、事業目的の数は5〜15個程度に収めるのがベストです。少なすぎると将来の事業拡大時に定款変更(登録免許税3万円)が必要になり、多すぎると「何の会社かわからない」と金融機関に警戒されます。[INTERNAL_LINK_1]
事業目的のNGワードにまつわる注意点・失敗例
よくある失敗3つ
- 「前各号に附帯する一切の事業」だけを記載する失敗:この文言は他の事業目的を補完するための定型句です。単独で記載しても意味をなしません。必ず具体的な事業目的を先に列挙し、最後の項目としてこの文言を置いてください。「これさえ書けば何でもできる」という誤解は根強いですが、完全な間違いです。
- ネットの情報を鵜呑みにしてコピペする失敗:他社の定款をそのままコピーして、自社の実態とまったく合わない事業目的を並べてしまうケースです。例えば、IT企業なのに「農産物の生産及び販売」が入っていると、法人口座の審査で「事業実態が不明」と判断されます。
- 許認可業種を「とりあえず入れておく」失敗:宅地建物取引業、産業廃棄物処理業、旅行業など、許認可が必要な業種を将来のためにと安易に記載すると、銀行から「許可証を提示してください」と求められ、持っていなければ口座開設が止まります。許可を取得する具体的な計画がない段階では記載しないのが鉄則です。
私や周囲で起きた実例
私自身の失敗は先述のとおりですが、周囲の起業家でさらに深刻なケースがありました。東京・浅草エリアで一緒に民泊運営をしていた知人の話です。
彼は合同会社を設立する際、事業目的に「旅館業」と記載しました。しかし、実際には旅館業法に基づく許可ではなく、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出で民泊を運営する計画でした。この2つは法律上まったく別の制度です。
結果、保健所に民泊の届出を提出した際に「定款に旅館業と書いてあるが、旅館業の許可を取る予定はあるのか」と確認が入り、手続きが一時ストップしました。最終的に定款変更を行い、事業目的を「住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業」に修正。定款変更の登録免許税3万円と司法書士報酬1万5,000円、合計約4万5,000円の追加出費と、2週間以上のタイムロスが発生しました。
この事例は、「似ているけれど法律上は別物」という業種名を正確に区別することの重要性を物語っています。AFPとして金融・不動産の知識がある私でも、法律用語の細かいニュアンスには注意が必要だと改めて感じた出来事でした。[INTERNAL_LINK_2]
さらにもう一つ、海外金融機関での営業経験がある私の視点から補足します。法人口座の開設審査は年々厳格化しています。特に2018年以降、マネーロンダリング対策の観点から、事業目的に「為替取引」「送金代行」「暗号資産」などの金融系ワードが入っている法人は、審査のハードルが格段に上がります。実際に取り組む事業であれば堂々と記載すべきですが、「何となくフィンテック系もやるかも」程度の考えで書くのは避けてください。
まとめ:法人の事業目的NGワードを避けて、スムーズに設立を完了させよう
この記事の要点3行
- 法人の事業目的NGワードは「曖昧すぎる表現」「許認可業種の無自覚な記載」「公序良俗に反する表現」の3パターンに集約される。これらを避ければ登記も口座開設もスムーズに進む。
- 事業目的の数は5〜15個程度が適切。少なすぎると定款変更が必要になり、多すぎると金融機関に警戒される。最後に「前各号に附帯する一切の事業」を付けるのは有効だが、単独記載はNG。
- 事業目的の文言は自力で考えるより、登記実績のあるテンプレートやクラウドサービスを活用するのが最も確実でコスパが良い方法である。
次に取るべきアクション
ここまで読んだあなたは、法人の事業目的におけるNGワードの全体像を把握できたはずです。次にやるべきことは、実際に定款のドラフトを作成することです。
定款作成を一から自分でやると、事業目的の文言チェックだけでなく、その他の記載事項(商号、本店所在地、資本金、発行可能株式総数など)でも迷う箇所が多く出てきます。司法書士に丸投げすれば確実ですが、費用は5〜10万円程度かかるのが一般的です。
コストを抑えつつ正確な定款を作りたいなら、freee会社設立を使うのが合理的な選択です。ガイドに従って必要事項を入力するだけで、事業目的も含めた定款が自動生成されます。電子定款にも対応しているため、紙の定款で必要な収入印紙代4万円を節約できるメリットもあります。私が知人の法人設立を手伝った際にもこのサービスを利用し、作業時間を大幅に短縮できました。
法人設立のスタートダッシュで躓かないためにも、まずは無料でアカウントを作成し、定款のドラフトを確認してみてください。

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