月商と融資可能額の正しい計算式|経営者が知るべき目安

「うちの月商なら、いくらまで融資を引けるのか」——経営者なら一度は考える疑問です。月商と融資可能額の計算式を正しく理解していないと、必要な資金を確保できなかったり、逆に過大な借入で資金繰りを圧迫したりします。本記事では、AFP・宅地建物取引士であり法人代表でもある私Christopherが、実体験を交えながら月商・融資可能額・計算の3点を軸に具体的な試算方法を解説します。

月商から融資可能額を計算する結論:まず答えを知ろう

一言で言うと「月商の3〜6か月分」が融資可能額の目安

結論から言います。銀行やノンバンクが中小企業に融資する際の一般的な目安は、月商の3か月分〜6か月分です。日本政策金融公庫の小規模事業者向け融資でもこのレンジが基準になりやすく、月商300万円の企業であれば900万〜1,800万円が一つの目安です。

ただし「月商×〇か月」はあくまで入口の概算に過ぎません。金融機関が最終的に見るのは返済能力であり、営業利益率・自己資本比率・代表者の信用情報など複数の要素を掛け合わせて判断します。

なぜ月商の3〜6か月分になるのか(根拠3つ)

  • 運転資金の回転期間:売掛金の回収サイクルと買掛金の支払いサイクルの差が平均2〜3か月であり、その間の資金ギャップを埋める金額が月商の数か月分に相当するためです。
  • 年間返済額と利益のバランス:融資の年間返済額は「経常利益+減価償却費」の範囲内に収めるのが鉄則です。月商が大きくても利益率が低ければ上限は3か月分に近づき、利益率が高ければ6か月分以上も狙えます。
  • 金融機関の内部格付け基準:信用保証協会の保証付き融資では、多くの場合「月商の3か月+既存借入残高」をベンチマークにしています。プロパー融資ではさらに厳しく、債務償還年数10年以内に収まるかが最終チェックポイントです。

筆者の実体験:法人設立時に融資を引いたリアルな話

私が株式会社を設立して最初の融資審査を受けた時の話

私Christopherは、自身の株式会社を設立した際、日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用しました。当時の月商見込みは約150万円。事業計画書に記載した数字に基づいて「月商の4か月分=600万円」を希望額として申請しました。

しかし、面談で担当者に言われたのは「月商見込みの根拠が弱い」という一言でした。海外金融機関での営業経験があった私は、「数字は盛るものではなく裏付けるもの」と理解していたつもりでしたが、それでも指摘されたポイントは3つありました。

一つ目は、創業前の売上実績がゼロだったこと。二つ目は、固定費の見積もりが曖昧だったこと。三つ目は、自己資金の出どころの証明が不十分だったことです。結局、最初の審査では希望額600万円に対して450万円に減額されました。月商の3か月分ちょうどです。

あの時は正直「なぜ150万円も削られたのか」と悔しさがありました。しかし振り返れば、計画書に記載した月商見込みの精度が甘かったのは事実です。この経験が、後の融資申請で「月商の計算精度=融資額を左右する」という確信に変わりました。

そこから学んだこと:数字で語る融資審査のリアル

減額された450万円で事業をスタートし、初年度の実績月商は平均約180万円に着地しました。当初見込みの150万円を上回ったことで、翌期に追加融資を申し込んだ際には月商の5か月分=900万円を満額回答で引くことができました。

このとき学んだのは、「実績月商があれば、融資可能額の倍率は上がる」という単純な事実です。創業期は月商の3か月分が限界でも、1期分の決算書があれば4〜6か月分に伸びます。AFP(日本FP協会認定)として資金計画を数多く見てきた経験からも、この傾向はほぼ一貫しています。

数字で整理すると以下の通りです。

  • 創業時:月商見込み150万円 × 3か月 = 融資額450万円
  • 2期目:実績月商180万円 × 5か月 = 融資額900万円
  • 差額:+450万円(月商実績があるだけで融資枠が倍増)

月商から融資可能額を計算する具体的な手順

ステップ別の計算方法と比較表

あなたの会社の月商から融資可能額を試算するには、以下の3ステップで進めます。

ステップ1:正確な月商を算出する
直近12か月の売上合計を12で割ります。季節変動が大きい業種は、直近6か月で計算すると実態に近くなります。たとえば年商2,400万円なら月商は200万円です。

ステップ2:運転資金の必要額を計算する
運転資金=(売掛金+棚卸資産)−買掛金 の算式で求めます。この金額が「事業を回すために最低限必要な融資額」の目安です。一般的に月商の1〜2か月分に収まります。

ステップ3:返済能力から上限額を逆算する
年間返済可能額=経常利益+減価償却費。この金額に希望返済年数を掛けた額が、理論上の融資上限です。たとえば年間返済可能額が200万円で返済期間5年なら、上限は1,000万円になります。

以下の比較表を参考にしてください。

月商 創業期(3か月分) 2期目以降(5か月分) 返済能力上限(例)
100万円 300万円 500万円 利益率による
200万円 600万円 1,000万円 利益率による
500万円 1,500万円 2,500万円 利益率による
1,000万円 3,000万円 5,000万円 利益率による

上記はあくまで概算です。実際には業種・財務内容・担保の有無で大きく変動します。

初心者が最初にやるべきこと

まず取り組むべきは「月商の正確な把握」です。意外に思われるかもしれませんが、経営者自身が直近12か月の月商を即答できないケースは珍しくありません。会計ソフトの月次推移表を印刷し、季節変動を可視化するだけで計算精度は格段に上がります。

次に、試算表(残高試算表)を最新月まで更新してください。金融機関は原則として「直近の試算表」を融資審査の必須書類として求めます。[INTERNAL_LINK_1]で試算表の作り方を解説していますので、まだ整備できていない方は先にそちらを確認してください。

私自身、東京・浅草で民泊を運営していた際に、月商の変動幅が大きいことが融資審査でネックになった経験があります。インバウンド需要の波で月商が50万円〜120万円と倍以上振れていたため、金融機関は「低い方の月商」を基準に査定しました。変動が大きい業種の方は、最低月商ベースで試算しておくことを強くおすすめします。

月商と融資可能額の計算でよくある失敗と注意点

よくある失敗3つ

  1. 売上と月商を混同する:月商は「売上高」であり、入金額ではありません。売掛金を含んだ発生ベースの数字を使うのが正しい計算です。入金ベースで申告すると、実態より低い月商で審査されてしまいます。
  2. 月商だけで融資可能額を決めつける:「月商500万円だから2,500万円借りられるはず」と考えるのは危険です。営業利益が赤字なら、月商がどれだけ大きくても融資は通りません。金融機関は返済原資を最重視します。
  3. 複数行への同時申込みで信用を落とす:短期間に3行以上へ融資申込みをすると、信用情報に照会履歴が残り「資金繰りに窮している」と判断されるリスクがあります。宅地建物取引士として不動産ローンの審査にも触れてきた私の経験上、住宅ローンでも事業融資でもこの「多重申込み」は確実にマイナス要因です。

私や周囲で起きた実例

私の知人経営者(飲食業・月商約250万円)は、コロナ禍の2020年にセーフティネット保証4号を活用して月商の6か月分=1,500万円の融資を受けました。しかし、売上回復が想定より遅れ、据置期間終了後の返済が重くのしかかりました。

問題の根本は「月商が戻る前提」で借入額を決めたことです。据置期間中に月商が150万円まで落ち込んだため、返済比率が跳ね上がりました。最終的にリスケジュール(返済条件変更)を申し入れる事態になり、追加融資の道が完全に閉ざされてしまいました。

この事例から言えるのは、「現在の月商」ではなく「今後12か月の想定月商の最低ライン」で融資可能額を計算すべきだということです。[INTERNAL_LINK_2]でリスケジュールのリスクについて詳しく解説しています。

私自身もフィリピン・マニラの不動産投資で、為替変動による手取り収入の減少を経験しています。月々の家賃収入が円安局面では膨らんで見えても、円高に振れた瞬間にキャッシュフローが目減りします。海外収入を含む月商で融資を申し込む場合は、保守的なレートで計算するのが鉄則です。

まとめ:月商と融資可能額の計算を正しく理解して資金調達を成功させよう

この記事の要点3行

  • 融資可能額の目安は月商の3〜6か月分。ただし創業期は3か月分が上限になりやすい。
  • 月商の「計算精度」が融資額を左右する。発生ベースの正確な売上高を把握し、季節変動も加味して試算することが重要。
  • 月商だけで判断せず、返済能力(経常利益+減価償却費)から逆算した上限額を必ず確認する。

次に取るべきアクション

この記事で月商と融資可能額の計算方法は理解できたはずです。しかし、実際にあなたの会社がいくらまで借りられるかは、業種・財務状況・既存借入残高によって大きく異なります。

自社の融資可能額を正確に知るには、プロの診断を受けるのが最も確実です。以下のサービスでは、無料であなたの会社の融資可能額を診断してもらえます。金融機関への申込み前に自社の立ち位置を把握しておくことで、審査通過率は確実に上がります。

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月商と融資可能額の計算は、経営の根幹に関わるテーマです。数字に基づいた判断を積み重ねることで、あなたの会社の資金調達力は確実に強化されます。まずは今日、自社の月商を正確に算出するところから始めてください。

筆者:Christopher/AFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士/株式会社代表。フィリピン(マニラ・セブ)およびハワイに実物件を保有。東京・浅草エリアでの民泊運営経験、海外金融機関での営業経験あり。実体験に基づく資金調達・不動産投資の情報を発信しています。

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