法人旅費規程の作り方がわからず、結局「実費精算だけ」で済ませていませんか。私が株式会社を設立した2019年当初、まさにその状態でした。旅費規程を整備しただけで年間約40万円の節税効果が生まれた実体験から、1人社長が実際に使える5つの条文と2026年版の日当相場を丁寧に解説します。
法人旅費規程の作り方:結論から言うと「先に規程を作り、後から旅費を精算する」が正解です
一言で言うと「規程→出張→精算」の順番が節税の鉄則
法人旅費規程は、出張前に社内ルールとして書面で整備しておく必要があります。出張後に「さかのぼって規程を作った」という事実が税務調査で発覚した場合、日当の非課税メリットはほぼ否定されます。
私がAFP(日本FP協会認定)の勉強をしていたころから繰り返し学んだ原則ですが、「実態が先、書類は後」では税務上の根拠が崩れます。旅費規程は先に作る、これだけは徹底してください。
なぜ旅費規程が節税につながるのか(根拠3つ)
- 日当は法人の損金算入が可能:所得税法9条1項4号により、旅費規程に基づいて支払われる出張日当は、受け取った役員・社員に所得税がかかりません。法人側は損金として計上でき、個人側は課税されない「二重のメリット」があります。
- 実費精算との差額が節税効果になる:実際の交通費や宿泊費より多少高めの日当設定(合理的な範囲内)が認められるため、実費との差額分が法人・個人双方にとって有利になります。
- 社会保険料の算定基礎に含まれない:日当は給与ではないため、社会保険料の標準報酬月額にも算入されません。役員報酬が高い1人社長にとって、社会保険料の節減効果も無視できません。
私が法人設立後に旅費規程を整備した実体験
設立1年目、規程なしで東京・フィリピン間を往復していた話
私が株式会社を設立したのは2019年秋のことです。当時はマニラとセブに不動産を保有しており、現地視察のために年に4〜5回フィリピンへ渡航していました。しかし設立1年目は旅費規程を作っておらず、航空券代と宿泊費の実費のみを経費計上していました。
ところが税理士との打ち合わせで「日当を設定していないんですか?勿体ないですよ」と指摘されて初めて気づきました。渡航1回あたり5〜7日の滞在で、海外出張日当を1日5,000円に設定するだけで、年間で25万〜35万円が損金になる計算です。さらに国内出張分の日当も加えると、年間40万円超の節税効果が見込めることがわかりました。
「なぜ設立前に調べなかったのか」と悔やみましたが、裏を返せば旅費規程一枚で取り戻せる節税余地がそれだけあったということです。
そこから学んだこと(数字で語る)
その後、2020年1月に旅費規程を整備し直しました。具体的な効果は以下のとおりです。
国内出張日当を1日3,000円、海外(フィリピン・ハワイ方面)出張日当を1日5,000円に設定。2020年は新型コロナウイルスの影響で渡航は停止しましたが、国内出張分だけで年間18万円の損金が追加計上できました。2021年以降はハワイ出張分も加わり、合計で年間38万〜45万円の範囲で損金が積み上がっています。
AFP資格を持つ私として言えることは、「節税は制度の合理的活用」です。旅費規程は税法が認めた正当な仕組みであり、後ろめたさは一切不要です。問題は「規程が存在しない」「規程と実態が乖離している」という運用ミスだけです。
法人旅費規程の作り方:5つの条文と2026年の日当相場
旅費規程に盛り込むべき5つの条文(サンプル付き)
以下は1人社長が実際に使える旅費規程の条文サンプルです。会社の実態に合わせて数字を調整してください。
| 条文番号 | 項目 | 内容サンプル |
|---|---|---|
| 第1条 | 目的・適用範囲 | 本規程は役員・従業員が業務上の出張をする際の旅費・日当を定めることを目的とし、全役員・従業員に適用する。 |
| 第2条 | 出張の定義 | 出張とは、業務のため通常の勤務地を離れ片道○km以上または所要時間○時間以上の移動を伴う業務従事をいう。 |
| 第3条 | 交通費・宿泊費 | 交通費は実費支給とし、新幹線はグリーン車(役員)・指定席(従業員)を上限とする。宿泊費は1泊○○円を上限に実費支給する。 |
| 第4条 | 日当の支給基準 | 日当は下表のとおり支給する。(役員:国内3,000〜5,000円/日、海外5,000〜10,000円/日 など) |
| 第5条 | 精算手続き | 出張終了後5営業日以内に旅費精算書・領収書を添付して申請する。日当は領収書不要とする。 |
2026年の日当相場は以下の水準が参考になります。国税庁が公表している「海外出張旅費の非課税限度額」や、大企業の支給実態調査をベースにした目安です。
| 出張区分 | 役員(1日あたり) | 従業員(1日あたり) |
|---|---|---|
| 国内・近距離(日帰り) | 2,000〜3,000円 | 1,000〜2,000円 |
| 国内・宿泊あり | 3,000〜5,000円 | 2,000〜3,500円 |
| 海外(アジア圏) | 5,000〜8,000円 | 3,000〜5,000円 |
| 海外(北米・欧州) | 8,000〜15,000円 | 5,000〜8,000円 |
1人社長の場合、「役員」欄を自分自身に適用します。ただし過度に高い日当設定は税務調査で「過大報酬」と見なされるリスクがあるため、同業他社の支給水準を意識した合理的な設定が求められます。
初心者が最初にやるべきこと(3ステップ)
旅費規程の整備が初めての方は、以下の順番で進めてください。難しく考える必要はありません。
- ステップ1:出張頻度と渡航先を洗い出す:過去1年の出張回数・行き先・日数を整理します。これが日当の総額シミュレーションの出発点です。
- ステップ2:規程書を作成し取締役決議を行う:1人会社でも議事録を作成し、取締役会(1人の場合は取締役の意思決定)として規程を正式決議します。日付を必ず入れてください。
- ステップ3:精算フローを整備してクラウドで管理する:毎回の出張ごとに旅費精算書を作成し、クラウド会計ソフトに取り込むルーティンを作ります。私は旅費精算をクラウドで完結させることで、確定申告期の作業が大幅に楽になりました。
旅費規程の整備と合わせて、会計ソフトの自動化を進めておくと、規程の運用記録も残りやすくなります。詳しくは 法人向けクラウド会計ソフト比較記事 も参考にしてください。
旅費規程でよくある失敗と私の周囲で起きた実例
よくある失敗4つ
- 規程が形骸化している:規程書を作ったものの、精算書を毎回作成しておらず「まとめて年末に処理」にしていたケース。税務調査で「実態を伴わない日当」と判断され、追徴課税を受けた事例があります。毎出張・毎精算が鉄則です。
- 役員だけ突出して高い日当設定:役員の日当が従業員の3倍以上になっていると、合理的な根拠がなければ「過大な役員報酬」と見なされる可能性があります。設定比率は1.5〜2倍程度に抑えるのが無難です。
- 自宅と会社が同住所のケースで「出張」が認められない:自宅兼事務所の場合、「通常の勤務地」の定義が曖昧になります。規程の第2条に「出張の定義」を明記し、移動距離や時間の基準を数値で記載することで、出張と通常業務の区別を明確にしてください。
- 海外日当に現地物価を反映させていない:ハワイやニューヨークへの出張でアジア圏と同額の日当を設定していると、実態とかけ離れて合理性が疑われます。国・地域ごとの物価水準を反映した区分設定が必要です。
私や周囲で起きた実例
私が浅草で民泊を運営していた時期(2020〜2022年)、同じく民泊オーナーの知人が旅費規程を「コピペで作って放置」していました。精算書の作成を怠り、通帳への入金記録だけで日当を処理していたところ、税務調査で「支給の根拠書類が不足」と指摘されました。
結果として2年分の日当・約60万円が否認され、法人税の追徴と延滞税が発生しました。「規程書さえあれば大丈夫」という思い込みが一番危険です。規程・精算書・領収書(交通費分)の三点セットを毎回整えることが、税務リスクを下げる現実的な方法です。
宅地建物取引士として不動産取引にも関わる私の経験から言うと、どの業種でも「書類の整備=リスク管理」という感覚は共通しています。旅費規程も同様で、事後的に整えようとしても遅いのです。詳しい書類管理の考え方については 法人の経費管理と書類保存のルール解説 もあわせてご覧ください。
まとめ:法人旅費規程の作り方で押さえるべきポイントと次のアクション
この記事の要点3行
- 旅費規程は出張前に作成・決議し、精算書を毎回必ず作成することが税務上の信頼性を担保します。
- 2026年の日当相場は国内日帰り1,000〜3,000円・海外(アジア)3,000〜8,000円が目安であり、役員と従業員の差は1.5〜2倍程度が合理的な設定です。
- 規程の作成だけでなく、クラウド会計ソフトで精算フローを自動化しておくことで、確定申告時の負担と記録漏れリスクを同時に下げられます。
次に取るべきアクション
旅費規程を整備したら、次は日々の精算・仕訳を効率化することが重要です。私が実際に使って便利だと感じたのは、銀行口座やクレジットカードと自動連携し、仕訳まで自動で提案してくれるクラウド会計ソフトです。旅費精算の記録も一元管理できるため、税務調査対策としても有効です。
まずは無料プランで試してみて、自社の運用に合うか確かめてみてください。

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