役員退職金と死亡退職金の違いを理解しないまま法人設計をすると、税務上の損金算入が否認されるリスクがあります。私自身、2026年に東京都内で株式会社を設立した際、この2つの退職金の設計を最初に詰めました。本記事では、1人社長が実務で直面する7つの違いを、損金算入の計算式・相続税の非課税枠・支給決議の手続きまで具体的に比較します。
退職金2種類の定義と前提|1人社長が最初に押さえるべき区別
役員退職金とは何か:生存中に支給される報酬代替の一形態
役員退職金とは、法人の役員が在任期間中に積み上げた貢献に対して、退任時に法人から支給される一時金です。給与所得とは異なり「退職所得」として課税されるため、受け取る役員個人にとっては税負担が大幅に軽くなる設計が可能です。退職所得控除を差し引いたうえで2分の1課税が適用されるため、同額を役員報酬として受け取るより手残りが増える場合があります。
ただし、支給が認められるには退職の「実態」が必要です。税務署が問題にするのは「本当に退職したか」という点で、1人社長が代表取締役を継続したまま退職金を受け取ろうとすると、損金算入を否認される可能性があります。私が総合保険代理店に勤務していた頃、経営者向け保険の提案で「退職金の出口設計」を相談されたケースでも、この「実態としての退職」の確認が最初の論点になっていました。
死亡退職金とは何か:相続と税務が交差する特殊な退職金
死亡退職金は、役員が在任中に死亡した場合に、法人が遺族に対して支給する退職金です。役員退職金と根拠は同じく「退職」にありますが、受け取るのが本人ではなく遺族である点が根本的に異なります。受け取った遺族にとっては「相続財産」として扱われ、相続税の課税対象になります。
ただし、死亡退職金には相続税法上の非課税枠が設けられています。「500万円×法定相続人の数」が非課税となるため、法定相続人が3人いれば1,500万円まで相続税がかかりません。この非課税枠は生命保険金の非課税枠と同じ計算式ですが、別枠で適用されます。両方を組み合わせれば、合計で相続税の圧縮効果が期待できる設計になります。
私が法人設立直後に試算して気づいた退職金設計の落とし穴
2026年の自社設立で直面した「退職金規程なし」問題
私が2026年に浅草エリアでインバウンド向け民泊事業の法人を立ち上げたとき、設立直後にやるべきことが山積みで、退職金規程の整備を後回しにしてしまいました。実際に税理士と打ち合わせをして初めて「規程がなければ退職金は損金算入の根拠が弱くなる」という指摘を受け、正直焦りました。
退職金規程がないまま役員退職金を支給した場合、金額の算定根拠を税務署に説明できず、「不相当に高額な役員給与」として損金算入を一部否認されるリスクがあります。設立初年度に規程を作らなかったことは、私にとって小さくない失敗でした。その後、退職金規程を定款の附属書類として整備し直しましたが、株主総会議事録や取締役会議事録との整合性を取り直すのに手間がかかりました。
保険代理店時代の相談事例から見えた設計ミスのパターン
総合保険代理店で経営者の資金相談を担当していた頃、退職金の出口設計を誤った事例を複数見ています。ある製造業の経営者(詳細は個人が特定されない形で抽象化しています)は、役員報酬を低く抑えて法人に利益を蓄積する方針を取っていましたが、退職金規程に「功績倍率3.0倍」と記載しながら、最終報酬月額が低すぎたため退職金の実額が期待より大幅に小さくなりました。
功績倍率法による退職金の概算は「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」が一般的な目安として使われます。最終報酬月額が低ければ、功績倍率を高く設定しても退職金の絶対額は上がりません。報酬の低い年数が長く続くと、後から功績倍率を上げても取り戻せない損失になります。この構造的な問題は、早い段階で設計しておかなければ手遅れになりやすいと、私自身も実感しています。
損金算入の計算式比較|役員退職金と死亡退職金で何が変わるか
功績倍率法の適用と税務上の上限イメージ
役員退職金の損金算入可否は、税務上「不相当に高額でないか」という基準で判断されます。実務で広く使われる算定方式が功績倍率法で、「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で算出します。功績倍率は役職によって異なり、一般的に代表取締役で3.0前後、取締役で2.0〜2.5前後が目安とされています(※同業他社比較や判例を踏まえた一般的な目安であり、個別の税額算定は税理士へご相談ください)。
死亡退職金の場合も、損金算入の計算式は役員退職金と同じ枠組みが適用されます。ただし、死亡という事実があるため「退職の実態」の立証は自動的に満たされます。生存退職と比べて「本当に退職したか」という論点が生じにくい分、損金算入の判断においては一点クリアされているとも言えます。事前確定届出給与のメリット|個人事業主が法人化前に試算した7論点2026
支給時期と損金算入タイミングの違い
役員退職金は、株主総会で支給を決議した日の属する事業年度に損金算入するのが原則です。ただし、退職金を分割して支給する場合、各支給日の事業年度に計上する方法も認められる場合があります。1人社長の場合は株主総会を一人で開催することになりますが、議事録の作成と保存は税務対応として欠かせません。
死亡退職金の損金算入タイミングは、支給を決定した日の属する事業年度です。役員が死亡した事業年度に「支給することを決定した」という議事録があれば、その期の損金として計上できます。死亡年度に多額の損金を立てることで、法人税負担を圧縮できる可能性がある点は、生存退職との大きな違いの一つです。
相続税の非課税枠と支給決議の実務|遺族への支給で押さえる7つの違い
死亡退職金 相続税 非課税枠の設計と生命保険との組み合わせ
死亡退職金の相続税非課税枠は「500万円×法定相続人の数」です。法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、1,500万円まで非課税になります。この非課税枠は、生命保険金の非課税枠(同じく500万円×法定相続人の数)と独立して適用されるため、両方を活用すれば合計3,000万円の非課税枠を確保できる計算になります。
私自身、フィリピンとハワイに実物不動産を保有しているため、相続対策は早い段階から意識しています。国内法人からの死亡退職金と生命保険を組み合わせた設計は、1人社長の相続対策として検討する価値があると考えています。ただし、相続税の実際の計算は個人の資産状況により大きく異なりますので、相続専門の税理士や税務署への相談を強く推奨します。赤字決算でも融資を受ける5つの方法|公庫申請中の代表が解説
支給決議の手続きと議事録作成の実務ポイント
役員退職金を支給するには、株主総会の決議が原則として必要です。1人会社では唯一の株主が自分自身であるため、形式的には一人で決議できますが、日付・決議内容・出席者を正確に記載した議事録を作成・保存しなければなりません。議事録がなければ税務調査で損金算入を否認されるリスクがあります。
死亡退職金の場合も同様に、取締役会または株主総会の決議が必要です。1人社長が死亡した場合は後継者や清算人が手続きを行うことになりますが、生前に退職金規程を整備し、支給額の算定方式と支給対象者を明確にしておくことが実務上の備えになります。退職金規程は定款変更とは別に整備できますが、株主総会での承認を経ておくと根拠が明確になります。
7つの違いまとめと1人社長が今すぐ動くべきこと
役員退職金と死亡退職金の違い7点を整理する
- ①受取人:役員退職金は本人、死亡退職金は遺族(法定相続人等)が受け取ります。
- ②課税区分:役員退職金は退職所得課税、死亡退職金は相続税の対象となります。
- ③非課税枠:死亡退職金には相続税法上の非課税枠「500万円×法定相続人の数」が適用されます。役員退職金には同枠はなく、退職所得控除が適用されます。
- ④退職の実態証明:役員退職金では「実態としての退職」の証明が求められます。死亡退職金では死亡の事実が退職の実態を自動的に証明します。
- ⑤損金算入タイミング:役員退職金は支給決議日の事業年度、死亡退職金は支給決定日の事業年度に損金算入します。
- ⑥功績倍率の適用:いずれも功績倍率法が適用されますが、死亡退職金では「特別功労加算」が認められるケースもあります(※個別の適否は税理士へ確認を推奨します)。
- ⑦退職金規程の整備タイミング:役員退職金・死亡退職金どちらも、支給前に退職金規程を整備しておくことが損金算入の根拠を強固にします。後付けの規程は税務上の信頼性が下がります。
設計を後回しにしないために今すぐ取るべき3つのアクション
私が2026年の法人設立で後悔したのは、退職金規程の整備を後回しにしたことです。法人を作ったばかりの時期は登記・口座開設・許認可(民泊の場合は住宅宿泊事業法の届出)など手続きが山積みで、税務設計まで手が回りにくいのは理解できます。しかしだからこそ、設立初年度のうちに退職金規程・功績倍率・最終報酬月額の設計を税理士と確認しておくことが重要です。
退職金の設計と並行して、日々の帳簿・決算書の整備も欠かせません。退職金支給時に「在任期間中の役員報酬推移」を証明できる会計データが必要になるからです。クラウド会計を早期に導入して記帳を自動化しておくと、税務対応の基盤が整います。私自身も法人の経理にクラウドツールを使い始めてから、月次の数字把握が格段にスムーズになりました。
本記事の内容はあくまで一般的な情報提供であり、個別の税額計算や節税効果の保証をするものではありません。退職金の設計は個人差が大きいため、必ず税理士や税務署に個別相談のうえで実行してください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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